FRPの仏陀さま
2019/05/09
何処に居ていただけば良いのか悩む...
午前中、シンバルやハイハットスタンドを売ろうと思い、見積もりをして貰いました。
¥20,000でした。
特にセットで買ったシンバルは一枚が¥1,000とかそんなものにしかならず、そんな値段なら時々見かける鳩よけCDみたいにベランダに吊って巨大鳩よけにしようかとか思ってしまいました。
時々強風に煽られてぶつかり「ジャーーーーーーン」とか鳴るのです。
期待ほどの査定額にはならなかったので、ふと、この頃は使わなくなったFocusriteのVoice Master Proも査定して貰うことにしました。
15年前、学生時代に手に入れた最初のチャンネルストリップで、とてもお世話になった思い出の機材です。
単体で¥15,000との査定でした。
僕は売ることにしました。
思い出の為だけに何か物を取っておく、という行為から、僕は距離を起きたくなったのでした。
もっと言ってしまえば、思い出を忘れてしまいたくなった、とも言えるかも知れません。
でも、当時の恋人が地元の駅でお土産として買って来てくれて、ステッカーのようにその機材に貼ってあった記念切手を僕は湿らせたティッシュを押し当て糊を溶かし、出来るだけ綺麗に剥がしました。
午後は出掛けました。
吉祥寺を歩いていると、ふと雑貨屋さんの仏陀さまが目にとまりました。
値札が無かったので、店員さんに聞くと、
「90年代後半のタイ製でFRPで出来ていて、¥38,000だったけれども値下げして今は¥15,000で、30体ほどあった新品も最後の一体を残すだけ、それが売れたらもう展示品のみ」
とのことでした。
僕はひとまず近くの道をウロウロした後、喫茶店へ入り、フルーツケーキを食べ、コーヒーを飲み、店に戻ってFRPで出来た仏陀さまを買いました。
随分悩みましたが、思い出の詰まった機材を売った値段と仏陀さまが同じ値段だったことが、何か僕に縁を感じさせたのでした。
日常の中に仏陀さまが現れたことで、僕の人生は毎日少しずつ影響を受け、長い目で見た結果、既定路線であった終着場所とは大きく離れた終着場所へと導かれていくのではないだろうか。
僕はそんなことを願っています。