僕のバルコニーは孤島

2019/05/30

とても孤独


今年は海外への出張が何件か入りそうで、また個人的にも遊びに行くのですが、夏の時期に丸一日水をあげなかっただけで、それが日差しの強い日であったならば、バルコニーの植物の半数が枯れてしまいます。
 
 
 
3年前に夏に海外へ行った時には、僕の家にはMARIKOちゃんがいました。
 
2年前に夏に海外へ行った時には、親友のまりちゃんに鍵を託してお水をあげてもらいました。
 
去年は誰もいなくなったので、長く家を空けることはしないようにしました。
 
 
今年も誰もいないので、家を空けている間、植物たちをどうすれば良いのか、僕は途方に暮れていました。
 
一生懸命育てても、もはや僕の人生を縛るものになってしまった植物達に、僕は少し苛々としましたし、一生懸命育てても、僕がいなくなったり死んだりしたら、別段の思い入れもなく処分されてしまうであろう植物達の為に腐心することに、僕はすっかり疲れてしまいました。
 
ただ、命ですし、放置して枯らしてしまう決心にはまだ至りませんでした。
 
色々と悩んで『自動水やり装置』や『灌漑設備』を購入しましたが、一体どう設置すれば良いのか、想像もつかず、比較的広いバルコニーに100個近くある鉢に対して、どうシステムを組めばよいのか、果たして出張までに完成させられるのか、僕は暗澹としながら、太陽に熱せられたバルコニーを汗だくで熊のようにウロウロと歩き回ったりしました。
 
 
僕は、この頃また時々飲むようになった精神安定剤をガリリと噛んで、ホームセンターへ向かいました。
 
そこで様々な部材をみて、水道管を支柱として組むことを思いつきました。
 
 
2メートルある水道管をひとまず6本と、それらを繋げるジョイントも色々と買って、タクシーに積めるか怪しいので、手で持って帰りました。
 
 
帰ってからマキタの電動ノコギリでパイプを切ったりなどして支柱を組み、深夜の暗いバルコニーに設置すると、それは想像以上に上手くいったように思われました。
 
それが昨日までのことです。
 
 
今日は支柱にチューブを這わせて水を吹き出すアタッチメントを一個一個設置して、ついに水を出してみました。
 
支柱の部材やアタッチメントが足りず、まだバルコニーの半分ほどしか設置出来ていませんが、なかなか様子が良いように感じました。
 
 
霧になって吹き出す水がバルコニーに煙のように漂い、そこに太陽の光が差して虹が見えたりしました。
 
僕は小学生の時に読んだ、N・ヴヌーコフ著の『孤島の冒険』を思い出しました。
 
船から大波に流され、泳ぎ着いた無人島で生き抜く14歳の少年を主人公にした児童小説。
 
僕が思い出したのは、彼が衛生面を鑑みて、小川から水を引いて水洗トイレを作ったシーンです。
 
彼は飢えたり食中毒になったり嵐にあったり迫り来る冬に恐れ慄いたりするのですが、そんな中で、水洗トイレを作り上げてその達成感に身震いしたりもするのです。
 
 
僕は、僕の家のバルコニーは、東京の真ん中の孤島のようだなと感じました。