実家とミックス
2017年10月15日
知らない犬がいた
実家へ帰る用事があったのだけれど、それがあまりに憂鬱なので、MARIKOちゃんに付いて来て貰うことにした。
僕は実家に帰る時にはひとりで帰るよりも、恋人と帰ることが多く、過去にももう何人もの恋人が僕の家に来ている。
今年もMARIKOちゃんで二人目。
親もそういう僕に慣れたようで、もう結婚相手を紹介しに来たと思うこともなくなったようだ。
実家へ向かう途中、気まぐれに、通った高校の駅で17年振りくらいに降りて、雨の中、高校の前まで歩いてみた。
通学のために通っていた商店街を歩いてみても、それほど懐かしくなかった。
よく寄ったレコード店は潰れてしまったようで、見当たらなかった。
高校は、思っていたより門も狭くて、並木も低く、こじんまりとしていて、なんだか記憶の中の様子とちょっと違った。
高校時代の良い思い出が無いからか、あまり感慨も湧かなかったし、ぼんやりと哀しくなって、雨に濡れた靴がとても気持ち悪かった。
実家の最寄駅から用事のある場所までタクシーに乗ったのだけど、いい年をしたタクシー運転手が今真っ最中の衆議院選挙に関して、
「自分の名前でも書いて入れますよ、入れたい候補者なんていないんで」
とか言うので、
「それは全く無意味な反抗で実に幼稚ですね。限りある中から最善を選べないのは幼稚なことですね」
とついつい言ってしまった。
MARIKOちゃんが僕の手を小刻みに握って合図を送り、僕に静かなる制止を試みたけれども、無駄だった。
実家では両親とMARIKOちゃんと僕ですき焼きを食べた。
僕がMARIKOちゃんを今まで実家に連れて行かなかったのは、過去に親にフィリピン人とのミックスの女性と付き合っていると話した時に、露骨に嫌がられたからで、もうMARIKOちゃんに関しては親と関わらないでいようと思ったからだ。
今回、実際にMARIKOちゃんを連れて行ったら、特に嫌な顔もされず、いたって普通で、根掘り葉掘り聞かれるようなこともなかった。
庭でなった柿やお菓子をお土産に貰った。
帰りの電車の中で、僕がいつも悪魔かのように語っている母親が、実際には小さな老女でしかなかったことに驚いたとMARIKOちゃんは言った。
「今までいっちゃんは物凄く特別な人で、誰にも触らせずに私だけが大切にしていきたいと思っていたけど、親に会って、そんなに特別じゃないんだなってわかった。もっと自由にさせてあげなきゃな、って思った。だから好きに生きていいよ」
とMARIKOちゃんはなんだかとても不思議なことを言った。