優しい猛獣
2017年9月2日
写真家として、哀しみもまた写真に撮らなければ
「お前なんか死んじまえよ」
とMARIKOちゃんからメールが来て、とても気分が落ち込んでいた時だから、もうダメだと思って着信拒否にした。
すると少ししてから、真夜中なのに誰かが来た。
覗き窓から外を覗いたけれど、塞がれていて見えない。
扉を開けようとすると、訪問者が扉に寄りかかっているようで、開かなかったけれども、寄りかかっている人間も僕からの圧力を感じたのか、扉から背中を離した。
MARIKOちゃんは叫びながら自分の腕に痣が出来るくらいに暴れて玄関を破壊した。
抱きすくめて抑え込もうとしても体格に差がありすぎて、腕の中に猛獣の秘められた力のようなものを感じた。
MARIKOちゃんはひとしきり暴れた後に帰ると言って出て行ったので、どうにかエレベーターの前で確保して留めた。
ひとまず落ち着かせてから急いで部屋に戻ってカメラを取って来て写真を撮った。
その後、どうにか部屋へ戻ったのだけど、MARIKOちゃんはやっぱり死ねと言うので、
「ああやっぱり死ななきゃいけないんだな」
と思って包丁を持って奥の暗い部屋へ行った。
MARIKOちゃんはさすがに気になったのか、一度僕の様子をみに来て、そして家から出て行った。
「ああ、誰もかれもが僕の傍からいなくなっていったし、こうして僕の人生は終わるのか」
と思って包丁を片手に暗い部屋の様子を眺めていると、たくさんの涙が出た。
すこしすると、MARIKOちゃんがアイスを買って戻って来て、刃の部分をむんずと掴んで、僕から包丁を取り上げた。