毎日、たくさんの餌を食べていたクサガメのアランが、ぱったりと食べなくなって、落ち着きなくベランダを歩き回るようになった。
もしやと思い、小さいながらも砂地のような場所を作ってやると、毎日、多くの時間をそこで過ごし、後ろ足で穴を掘るような動作もするようになった。
そして、思った通り、卵を産んだ。
最終的に8個くらい産んだ。
あの甲羅に挟まれたスペースに、どうやってこれだけの卵が入っていたのかと思うと、女性というか雌の苦難が思われた。
そして、都会のベランダでもカメが卵を産むという、その生命の神秘に僕は感動をした。
卵は雄がいないので無精卵だから、子亀が生まれたりはしないので、焼いたりして食べてみようかなとも思ったけれども、それはやめた。