頭の奥は霧に霞んだ向こう側のようだった
2016年3月19日
変わらない風景の前で
御墓参りと実家にいる亀を引き取りに行くため、久し振りに帰省した。
東京ではまずお目にかからないほど、故郷は霧に煙っていて、暖かい日だったから、水分が肌に甘ったるくまとわりついたし、持っていた紙袋が湿ってクタクタになった。
ふと思い立って、中学校の同級生に連絡をしたら、近くにいるという。
彼女は車だそうで、だから近くの大きな店の駐車場で待ち合わせをした。
実際に会ったのは十七年振りとか、そんな感じだと思う。
あまり時間もなくて、そのまま駐車場で立ち話をした。
「昔、一緒に出掛けたよね。あれ、今から思うとデートだったよね」
と彼女に言われて、
「今から思うとそうだよね」
と僕も言った。
と彼女に言われて、
「今から思うとそうだよね」
と僕も言った。
中学一年生くらいだったと思うから、僕の初デートだと思う。
そして彼女が、僕の家で飼っていた犬の名前を口にするものだから、僕はとても驚いたのだけど、彼女は僕の家にも遊びに来たことがあるとの事だった。
僕はそのほかにも、彼女から当時の話を色々と聞いて、自分がいかにその頃の記憶を、頭の奥の方にしまい込んでいるのか、実感した。
彼女は長居が出来ないとの事だったから、十分ちょっと立ち話をしてお別れをした。
別れ際に彼女はハグをして僕のほっぺたにキスをした。
今までに感じた事のない不思議なキスだったし、不思議な気持になった。
それは僕の頭の中の扉を開ける鍵なのかも知れない。